なんといっても、かじりつく一本目にはもってこいの書であると思います。
この著者の方の原本というか?歴史的仮名遣いのとっても読みにくい本を、見習いのころから携さえて勉強した思い出があります。
”かやおい”を”かやをひ”といった具合です。
一冊で、広く満遍なく網羅してあるので、大方理解すれば後は現場での応用機転で何とでもなると思います。
基本的なことから、さしがね伸びがね、さしがね術、仕口、原寸作図、上棟の祝詞などなど、みっちりおさえてあって、大工さんといういろいろなことに関して広い分野である程度の理解を持たなければ、まづどうにもならんという職に対し、一番ありがたい書となると思います。
現代的仮名遣いで普通にかかれてますので、読みやすいです。
初めは、ちんぷんかんぷんであると思いますが、何度も何度も読み直して、仕口や術法のいうところの実際の模型を作るうちに誰でも理解できると思います。
書いていることや、手順が理解できれば忘れてもいいと思います。
仕事する前の晩に見れば思い出せるはずですから。
考え方の組みたての手順や取り決めごとだけを、ムチムチに覚えればいいんじゃないでしょうか?これを覚えるためのお勉強であるといってもよろしいと思います。
本書にある答えはいつもひとつですが、実務ではそうは行きません。
種々の事柄を加味して、使う木柄と仕口はどれを選択するとか、木割りにのっとった木拾いで果たして予算内であるのか?などなど答えが何通りもあることのほうが多いのですから。
何通りもの答えを知るためには、普遍の唯一つの答えというものをまずある程度は、おさえておかなくては本末転倒な話となるわけで、本書はまづ一本目の助け舟となると思います。
「これがわからにゃ〜後にゃ何も続かん。」という意気込みで頑張って頂くと、著者様も喜ばれると思います。
大工さんはおばかじゃできません。幾ばくかの誇りと使命感を燃やし精進です。
こういった系統の本は、1.3.5.8.10年目と毎年読んでも何かしら新しいことに気づきます。
そのときに沸いて出てくる脳内アドレナリンもまたとても楽しいものであると思います。
3,800円を後にいくらの価値まで昇らせるかは、読み手次第。
飽きてしまったあとは、仕口や材自体を詳しく書いたものや、文化財修理の際に出来た図面など手に入れられて眺めてもよろしいかと思いますが、初めはあれこれかじらず一本のほんを、何度も徹底的にかじるほうをお勧めしたいと思います。